HOME …> 純粋税制批判本文 …> 第十一章 食糧の安全保障

 目次 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22

第十一章 食量の安全保障

食糧の安全保障は、生死の問題であり、これは飼料穀物の自給化によってのみ可能である。分配金制度を利用すれば、食管制度は円滑に廃止できる。米は自由化しても、生産性上昇によって、輸出さえ可能になる。

飼料用穀物の重視

太平洋戦争初期、隣組ができ、空襲に備えて防空頭巾をかぶり、バケツリレーの消火訓練が流行した。こんな子供だましが、どんな結果になったか、いやというほど、思い知らされた筈である。米の自給率を高く保つことは、いざという時のために絶対必要である、などという論を聞くと、それを思い出す。

食糧の安全保障とは生死の問題である。そんな甘い考えは通用しない。現在の日本では、栄養源を輸入穀物や、飼料に大きく依存している。米だけでは日本人の三分の一しか生き延びられないだろう。しかも、同時に原油の輸入も止まる可能性が大きい。油がなければ魚もとれない。化学肥料もつくれない。肥料なし、農薬なしで、今の収量の何割が確保できるだろうか。後述するが、有機肥料を活用するシステムを、今のうちに、ある程度整えておくことが必要である。

飼料穀物の自給率を高めておくことは、食糧の安全保障として、絶対必要である。飼料穀物は、いざというとき、人間の食料になる。この自給率を三十パーセントにしておけば、米と合わせて、必要量をまかなうことができる。(現在日本で消費されている総カロリーの過半は、無駄に棄てられているから、天候異変がなければ、生き延びるだけなら、完全自給はそれほど難しくはない)

自給率三十パーセントを保つための関税に文句をつける国はいないだろう。 国産飼料に大きな補助金をつければ税率を下げることもできる。 後述する自由化によって、大規模農業が可能になれば、国内の過半の水田で裏作も経済的に成り立つようになる。

食糧危機

ここで、いざという場合とは、どんなときかを考えて見よう。水爆戦争は、あってはならないものだから考えないことにする。恐竜の絶滅は隕石の落下によるという説がある。大隕石の落下で飛び散った塵が空を覆い、そのため気温が低下して、食物が得られなくなったためといわれる。

そんなことは、まずあり得ないとしても、ちょっとした異変でも、数年或いは数十年にわたって地球規模の大凶作が続く可能性はある。そうなれば、どんなにドルをため込んでいても、紙屑に過ぎず、他国からの食糧輸入は期待できないのである。

水田による飼料穀物の栽培

水田の生産性は、畑作とは、かけ離れて大きい。 だから、減反しても水田は活用したい。飼料用だから味はどんなに悪くても良いという条件で、反当たり収量が極めて大きい、或いは、少肥料、無農薬でもつくれる、稲の新品種などが求められる。

日本のすぐれたバイオ技術によれば、反収、三倍も夢ではない。政府が充分な援助をして、開発を進めるべきである。

化学合成飼料

石油蛋白の開発を進める。これを飼料として得られた畜肉は、それを明示して販売する。人類の将来のために、パイオニアの勇気をもって、それを食べるという人体実験に応じる人が多くいるだろう。木材の食料化も考えられる。かっては貴重な燃料であった莫大な廃材が、ゴミとして捨てられ、焼却されている。セルロースは、加水分解すれば、ぶどう糖になる。リグニンも化学処理によって飼料化できるだろう。

バイオの利用も考えられる。早い話が、廃材で白蟻を養殖し、その白蟻を飼料にするなど。これらは、単に経済的に引き合わないというだけの理由で実用化されていないものであり、政府が、ある程度の補助をすれば、成り立つ産業である。

僅かな量でも商業生産の実績があれば、それを十倍、百倍にするのは、比較的短時日で、できる。ゼロからの出発では間に合わない。国内の森林は、万一のときに備えて、温存し、大切に育成しておきたい。

減反の自由化

米の余剰対策として、強制割当の減反が実施されているが、これは全く日本的なやり方で、われわれのような単細胞にはとうてい理解できない、高い文化性の現れであろう。我々の感覚では、次のようなやり方になる。減反希望者を募集し、減反に応じてもよいと思う、反当たりの補助金の額を記入して申し込ませる。

但し、共同で十町歩以上にまとめさせる。その補助金が少ない順に、必要な面積になるまで、減反実施者を採用する。減反になった水田では、いつでも稲作に切りかえられる状態が保たれれば何をつくって売っても良い。たとえばどじょうの養殖などでも良い。

但し、米など食用穀物をつくったときは、配合飼料会社に売ることを義務づけ、政府は、この米がもはや人間の食用にはならない形に混合されるまで確認する。前述した税制によって、農地の売買、貸借が活発になれば、大規模農業が可能になり、又、超高収量の飼料作物が開発されるなどで、必要な補助金は、大巾に減少して行くであろう。

米の自由化

まず、米の消費者価格を三十パーセント値上げする。生産者価格は従来通りにすえ置く。その代わり、全国民一律に無条件で、米価値上げ分として、一万円づつ分配する。こうすれば、自由米業者は、政府より高く買い、安く売っても利益が出る。

これでは、政府に米を売る農家も政府から米を買う消費者もいなくなる。事実上食管制度は消滅する。適当なところで法的にも廃止すればよい。

北風と太陽の寓話のように、こうして、戦争の遺物、身動きを不自由にしている重い外套を脱がせることができる。

分配金一兆円は、結局、政府の持ち出しになるが、なんら差支えない。食管制度は、農民を過保護にして、消費者は高い米を買わされているという考えは、間違っている。米は高くても良い。今の日本で米価を十倍にしたとしても、一人でも餓死者が出るだろうか。農民を窮乏させない方がもっと大切である。それは結局国民みんなの利益になるのである。

農民が食管制度廃止に反対するのは、食管関係支出を減らそうとする政府の下心が見え見えだからである。食管制度は、もはや、二十一世紀に通用するものではないが、それでも、所得再分配の大きな役割を果たしてきた。

政府が食管赤字を減らそうとするのは結果的に所得再分配率を減らそうとすることであり、そんなことは、できないし、許してはならない。分配金で所得再分配としての食管赤字を肩替りするべきである。米は高くて良い。それよりも、食管制度による、競争制限、流通阻害、それらから来る、不合理、非効率が問題なのである。

そして、これらの問題を解決する手段は、分配金制度しかないという、好例が、これなのである。これを、契機として、分配金制度を発展させたいものである。

米の輸入自由化

米は日本人の主食であるから、輸入品のシェアをかなり低いところに保つ正当性がある。輸入禁止を解除し、関税の税率で操作して、徐々に輸入を増やし、輸入品十パーセントの線に近づける。輸入のために米が過剰になって価格が下がることがないように、減反面積の加減で、米の国内価格を調整する。

日本の米の生産性は、農地法、食管制などの手枷、足枷から解放されたら、飛躍的に上昇するだろう。日本人のすぐれた技術と、活力をもってすれば。生産性上昇に応じて国内価格を下げて行く。但し、生産者の利益も増加するように、コスト低下分の全部は下げない。

価格が下がれば、関税率も下げ輸入米のシェアは十パーセントに保つ。もっと下がれば、関税をゼロにしても輸入は無くなり、日本が米の輸出国になることも夢ではない。こうなれば、食糧の安全保障は万全となる。

大地震対策

大地震に備えて、非常食を用意するなど、バケツリレーと同じ発想で無意味である。東京に、関東大震災クラスの大地震がおこれば、火災によって、数十万人が焼死するかもしれない。地震対策は生死の問題なのである。人間は三日ぐらい食べなくても死なないし、翌日には全国から救援物資が集まるだろう。

有効な対策として次の提案をする。上空のヘリコプターからの電波で、適切な避難誘導をするスピーカーを、要所要所に多数配置する。このスピーカーは、停電中でも電池で作動する。地下鉄は、逃げ遅れたときの避難場所になる。構内の電灯は防爆型とし、蓄電池を備える。地下鉄駅の上部付近に大水槽を設置し、構内の可燃物のあるところには、スプリンクラーから、大量の水を噴出できるようにする。

地震対策と資源の有効活用から見ると地下水の汲み上げ規制は善悪不明である。地下水を汲み上げると地盤が沈下するということは、その土地が水の上に浮いている状態であることを示す。地下水を出来るだけ汲み上げて、地盤を沈下させておいた方が、地盤が安定し、地震の被害を小さく出来るかもしれない。

但し、沈下が速すぎると困るから、地下水汲み上げ税を新設し、その税率で汲み上げ量を調整する。その税収は、堤防の建設などの地盤沈下対策に使う。地下水は夏でも温度が低い。低温の冷却水を使うことは夏期、大きな省エネルギーになる。又、冷却に使用した後の水は、清浄だから、水道水に使える。不必要な汲み上げ禁止は、国民の損失である。

新しい建築物の基礎工事は岩盤まで達する杭打ちを義務ずける。しかしながら、何よりもまず、後に述べる適切な税制によって、地方分散を誘導することが、最も有効な対策である。

 目次 1 2 3 4 5 6 7 8 9 10 11 12 13 14 15 16 17 18 19 20 21 22
スポンサーリンク