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第九章 土地の有効活用

安い借地料で誰でも自由に土地を使えるようにする。そのために必要なのは、地価を下げることでなく、高値安定であり、政府は買い支えと保有税で地価を制御する。借地借家法、農地法を改正して土地の流通を自由にする。

保有税と地価

もし、土地に、一u当たり、年一億円の保有税をかければ、すべての土地の所有権は、ただちに放棄される。即ち、地価はゼロになる。逆に、保有コストが、ゼロであれば、地価は、無限大へ向かって上昇して行くことを説明しよう。

まず、実質金利をゼロとする。次に、ある土地から得られる収益を、年一万円と仮定する。その一万円は資産所得である。一方、預金等からは、資産所得は得られない。預金者は、預金を下ろし、争って土地を買おうとするだろう。資産所得がゼロになるまでは。もし一年当たりの保有税を地価の百万分の一にすると、その土地は百億円となって、はじめて資産所得はゼロになるのである。税率を二パーセントとすれば地価は五十万円になる。

このように、地価は保有税によって政府が自由にコントロールできることは、小学生にでもわかる算数である。土地の円滑な流通に必要な土地売買を、土地コロガシとか言って、犯人扱いにしたり、有用な投機を罪悪視したり、売却益課税で流通を阻害したり、土地売買を届出制にしたことによって、少しは地価上昇が、納まったと言ったり、国民の大切な財産である旧国鉄用地を、不当な低価格で払い下げろ、と言ったりする連中は、国賊であり、国辱である。

日本の地価が高い原因は、実質金利が低いこと(これは喜ぶべきことである)税額をきめる評価額が、実勢価格とあまりにもかけはなれ、その百分の一にも満たないことにある。都心に百uの土地を持っている人が、固定資産税が高くて払い切れない、と文句を言うのを聞くと、人間とは、これほど愚かなものか、と悲しくなる。

そこを売れば、郊外の環境の良い住宅地を千uも買い(我々は、一生働いた退職金を投じても、十uしか買えない)宮殿のような家を建てることが出来るのですよ。しかしながら、固定資産税に代わる保有税を増額して、地価を下げろと言っているのではない。

地価が暴落すれば、日本経済は大混乱に陥る。企業の倒産が続出し、株価も暴落し、銀行は破産する。必要なのは、土地の有効活用であり、高地価は、それを妨げないことを次に述べる。

借地料

自由経済では、借地料も、需要と供給の関係で定まる。借地料は地価とは関係なく定まるのである。勿論、借地料が上がれば地価も上がる。しかし、たとえば、保有税を上げる事によって地価を下げても、借地料は下がらない。原因と結果を取り違えてはならない。

庶民にとって必要なのは、地価を下げることではなく、安い借地料で、自由に土地が借りられることである。借地料を下げるには、土地の供給をふやすことが先決であることは言うまでもない。
良質の宅地をふやすには、上下水道、道路、鉄道等交通網の整備、事業所の地方分散が有効である。

保有税(固定資産税)の増額で、土地の供給を増やそうとするのは、北風で外套を脱がそうとするのと同じである。保有コストが低いとか、値上がり期待が大きいとかは、土地を売らない原因となり、値上がりの原因とはなっても、土地を貸さない理由とはならないことは、わかりきったことではないか。

土地をただで遊ばせて置くよりは、どんなに安い借地料でも貸した方が得にきまっている。これを妨げているのは、借地借家法であり、農地法である。これを何とかしないかぎり、いつまでも戦後は終わらないし、国民は真の豊かな生活を楽しむことはできないのである。

借地、借家法、農地法

太平洋戦争は、経済政策の誤りによる、経済の行き詰まりが原因であったことは前に述べた。実質金利の高止まりは、まず借金経営の企業をしだいに追いつめ、利払いのための借金を重ねるようになり遂には破産させる。

金持ちは投資を止め、労働者は職を失い、需要は減退し、そのためにますます失業者が増えるという悪循環に陥った。農産物は安く、農民は借金の利息を払えない。

次に、倒産企業に貸し付けていた銀行が行き詰まり、最後は銀行に預金していた金持ちまで損失をうける。これらの結果、海外に発展する以外に道はないというムードが高まって行ったのである。戦前にも、所得の再分配はあった。しかし、不十分であった。しかも、再分配に逆行する、人頭税的制度もあった、徴兵制は、命まで取る人頭税と言える。

しかしながら、皮肉なことに、金持ち優遇の結果によって起こった戦争が、金持ちを貧乏にさせる結果になった。兵士の主力は貧乏人であるから、貧乏人を飢え死にさせては戦争はできない。だれでもが食うや食はずの状態のとき、貧乏人を飢え死にさせないためには、共産主義的にならざるを得ない。

全国民の運命共同体意識が、苦しい戦争の必然的結果として発生した。占領軍が主導した、戦後の理想に近い民主的改革が、円滑に進んだのは、こういう下地があったからなのである。今では、気狂いじみたものとなった、累進税制と同じく、借地借家法とその運用も、戦争の遺物である。

土地の流通を阻害し、有効活用をさまたげている、これらの遺物を、どのようにすれば、うまく片づけられるか、考えて見よう。既得権となっている借地、借家権は、所有権に切り換え、保有税、財産税を課す。所有権は、地主、家主と、借地、借家権者の共有とし、その割合は、互いの話合いできめる。

新しい契約については、当事者どうしの合意によってきめた契約条件にしたがうものとする。契約期間が終われば、正当な理由は必要とせず無条件で返還を請求できるように法を改正する。そもそも強い借地借家権が発生したのは、賃貸料を統制し、低く抑えたことに原因がある。賃貸料は、自由競争に任せなければならない。

このようにしても、うっかり貸すと、また、取られてしまうのではないかという不安が残ると、その分、貸し手が減り賃貸料は割高になる。適切な再分配が行われている民主政治のもとでは、絶対に、昔のようなことは起こらないことを、政府が充分に説明することが必要である。

戦中戦後の弱者保護は、経済競争を停止する共産主義的手段で行われた。今からは、そんなことはしない。借地借家人の権利を強化するというペテンにかけてあなたの財産をとり上げるようなことはしない。正々堂々と、財産税によって、なしくずしに社会に返して頂くだけである。土地を貸さずに、じっと抱えていても、財産税は同じだけかかってくる。財産を減らさないためには、それを資本として活用し、事業所得で財産税を払って行くしかないのですと。

又、政府は、公営住宅の家賃を、自由化して、(入居希望者の競争入札によって家賃を決めるなど)借家人の権利を認めないことを事実で示さなければならない。(弱者保護は、分配金で行うべきことは前述した。)農地についても同様である。農地法を改正して、貸借の自由を確立すれば、農地は有効に活用され、農業の生産性を上げることができる。

家賃と地価

借地料が地価に関係なく定まるのと同じく、家賃も、借手と貸手の関係、即ち需要と供給によって定まる。そもそも現在の地価は、今後も、少なくとも名目金利分は上昇を続けるという推定に基いて、高価格が成立しているのである。(もし、この前提が崩れると、大暴落する)公営住宅の家賃をきめるのに、土地代金の金利分を算入するのは愚の骨頂である。

物価上昇率ゼロを前提とした、中世の経済学で考えるから、おかしなことになる。あるときは家賃が安すぎて競争率が千倍にもなり、あるときは高すぎて、入居希望者がゼロになる。実質金利ゼロを前提とする現代の経済学では、金利分は、借地料にも家賃にも無関係である。したがって、地価が高くても家賃は安くできる。

地価の安定

地価は賃金ベースと並ぶ物価の大本である。これを安定させ、名目金利の分だけ安定的に上昇させることによって実質金利をゼロに保つことは、円滑な経済運営のために不可欠である。こうなれば、貧乏人でも土地を買う事ができる。地価が安定していれば、銀行は土地を担保として、安心して金を貸すし、金利分は借増ししても、売ったとき、値上がり分で相殺される。

しかしながら、現在の地価は極めて不安定である。上方よりも、むしろ下方に弾力的である。先に、保有コストがゼロであれば、地価は無限大になると述べたが、現実の保有コストの大部分は、いわゆる高所恐怖、即ち、値下がりの危険に対する保険料である。

保険料は、一朝、事あれば、すぐに、二倍三倍になる。たとえば、どこかで戦争が起こり原油輸入が途絶えれば、地価は大暴落する。これによるダメージは、暴騰の比ではない。保有税で地価をいじるのは危険極まりない。そこで次の提案をする。

実勢価格よりやや低い目の公示価格を定め、公示価格でなら、政府が無制限に買うことを約束する。これは約束だけで、実際に買うことにはならない。なぜなら、値上がり期待が常に存在するから、実勢価格は、保証されている底値よりも常に高くなるからである。次に、保有税の税額が、借地料と等しくなるように、税率を徐々に上げていく。(始めの税額は、現行の固定資産税と等しくなるようにするから公示価格に対する保有税の税率は極めて低い)

現在の固定資産税は、借地料より低いから、これは、保有コストの増大となり地価は下がろうとする。ところが、公示価格で下支えされているから、地価は安定せざるを得ない。公示価格は、平均して、名目金利分は上げて行く。

妥当な地価

今まで述べて来たように、高地価は、それほど悪いことではない。既に上ってしまった地価を、人為的に下げることは、良くない。ひどい不公平を生じるからである。たとえば、借金して、土地を仕入れた不動産屋は破産する。自然発生の地価上昇による不公平は、仕方がないが、意図的な不公平は許されない。

高地価には、良い点もある。日本の国土の値段がアメリカの数倍とは、気分が良いではないか。国民の過半が、猫のひたいとは言え、土地を持っている現在、皆が豊かな気持ちになれる。財産税の税率を、極めて低くしても、莫大な税収が得られる。

問題は、労働による所得では、土地が買えないことである。或いは、労働による所得では、財産税が払いきれないことである。しかしながら、労働生産性が上昇すれば、地価が名目金利分しか上がらないかぎり、地価は相対的には低下する。

また社会資本の充実によって土地の実質的な価値が高くなれば、相対的な地価は低下する。妥当な地価とは、まじめに働けば土地が買える地価だとすれば、地価が安定している限り、地価は次第に妥当な地価に近づいて行くであろう。

地価の安定と競争原理

保有税と買い支えで、地価を安定させることは、金融政策で、物価と金利を制御するのと同じである。地価を統制し、競争原理を否定するものではない。政府が操作するのは、平均的地価であり、個々の土地の価格は、自由競争に任せる。

ある土地が安くなって、公示価格に接近しすぎたときは、徐々に公示価格を下げて行く。逆に高くなって公示価格から、離れすぎたときは上げて行く。このようにすれば、地価を安定させながら、競争原理を働かせることができる。

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